津田孫兵衛が拠点を置く福井県小浜市は若狭の国と呼ばれ、古来より神に供え天皇に捧げる食べ物を供給する御食国(みけつくに)でした。
その歴史は奈良・平安時代から脈々と続いており、江戸の頃からは北前船と呼ばれる廻船が行き来する貿易の拠点でもありました。
小浜には昔から「京は遠ても十八里」という言葉があります。
これは京都と若狭各地を結ぶ“鯖街道”と呼ばれる古道に由来する言葉であり、古くは若狭湾で水揚げされた海産物や北前船で運ばれた多様な荷がこの街道を通って京に運ばれ、京からは西陣織をはじめとする工芸品などが運ばれて、北前船で朝鮮、中国、日本全国各地へ運ばれて、相互に文化をも行き来しておりました。
京とのつながりが盛んなそうした時代を背景に、さかのぼること三百二十余年の元禄元年。若狭の国・遠敷郡今富村小浜今宮の地(現在の小浜市)で津田孫兵衛は鮮魚商を創業いたしました。当時は「鍵屋孫兵衛」と名乗り蔵の鍵をイメージした家印を使っており、鮮魚商としてのスタートでした。鮮魚商として、若狭より京都までいかに魚をおいしく運ぶかという試行錯誤をするなかでさまざまな加工技術が生まれ、徐々に水産加工への道を歩みはじめたのです。
ささ漬けや昆布締めもまた、そうした経緯で生まれてきました。
その繊細な味わいは“京都で好まれる”という前提で磨かれたものでした。古来より長い間、加工も販売もベクトルは京都に向いていましたが、現在はインターネットやカタログを通して全国のみなさまに親しんでいただける様になったことを、一同うれしく感じております。
よく言われることですが「老舗が一番新しい」という言葉があります。長い伝統があるから楽かというと、決してそうではない。先述のインターネットなどを介した通信販売への挑戦もそうですが、老舗だからこそ時代に合わせて常に前進していかないことには、単なる自己満足に終わります。
加工にまつわる最新技術の導入も、そうした取り組みのなかでも重要な要素です。わたくしたちが現在の工場兼販売所を建てたのは、今から二十年くらい前のことですが、それ以前から食品衛生法に基づく非常に厳しい管理方法であるHACCP(ハセップ)に対応する工場をつくろうとさまざまに奔走し、おかげ様で福井県より認証を頂いています。
近年では、よりおいしい状態でみなさまのお手元に届くよう、最先端の冷凍・冷蔵技術も導入いたしました。いずれも、人さまに喜んでいただく質を保ち高い安全性を維持していくには、伝統の味といえど最新技術を採り入れることも必要との考えからです。
他方で津田孫兵衛は、工場での大量生産ではなく職人による手作業でこの味を維持しております。人の手や勘・長年の経験という唯一無二の技を維持・発展させていくことにも、絶え間なく注力しなければならない。最新技術と人の手という一見相反する要素が、今の津田孫兵衛を支える大きな両輪となっているのです。
この両輪を大切に、津田孫兵衛はこれからも、みなさまに愛される味をつくり続けられるよう、地道な努力を重ねてまいりたいと存じます。
津田信一
株式会社 津田孫兵衛
〒917-8505 福井県小浜市小浜玉前69-6
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